MOON NIGHT LADY

 漆黒の闇、星明りが無い深夜、この世の終わりとも思える・・・・

 だが、その闇を照らす輝き・・・・・月

 月の輝きは美しい、闇に輝くから美しいのかもしれない、また妖しい輝き・・・・

 人々はその輝きを見つめてきた、けして消える事の無い輝きを・・・・

 

 

 女神・・・・そう例えても良いだろう、月を崇め月を敬う

 アルテミス・・・・月と狩りの女神・・・・美しさは人々を惑わせる、そして・・・・・・

 狩る・・・・・・・・・・・

 女神・・・・・・・・アルテミス・・・・

 そう・・・・・

 私のように・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うふ、うふ、うふふ、私に狩れないものは無いのよん」

 深夜、ミサトは台所にいた。電気をつけずに足音を立てないようにすり足で歩き、頭からタオルをかぶり鼻下で結んでいる。

「うふ、うふ、うふふ、目標物発見、これよりオペレーションエビチュを開始する!」

 冷蔵庫に向かって小走り、無論音は立てていない。そしてユックリとドアを開けた・・・・

「夜の一杯が良いのよね〜〜〜」

 冷蔵庫の中から取り出したのは、ミサト愛飲のエビチュ(500ml)右頬に缶を当て冷たさを味わう。

「はあ〜〜〜〜ん、この冷たさ、中身はもっと冷たくて美味しいのよね〜〜」

 続いて左頬に当て冷たさを味わった。

「あは〜〜〜〜ん、もうシ・ア・ワ・セ」

 冷たさだけで天国に行ったようだ。

「さあて、次は極楽に行くわよ〜〜〜」

 プルタブに手を伸ばし開けようとした・・・・・

 パッ!

「えっ?何?」

 突然、台所の電気がついた、ミサトは一瞬戸惑い当たりを見まわしたらそこには・・・・

「ミサトさん!」

「シ、シンちゃん〜〜」

 ミサトは額と背中から冷や汗が流れた、眼の先には腕を組んで立っているシンジが居た、それもご立腹のようだ。

「ミサトさん、その手に持っているものは何ですか」

 分っているのだがあえて聞いてみる。

「こ、これ〜?あっ、何で私こんなのを持っているのかしら?変ね〜あは、あは、あはは」

 素早く冷蔵庫に戻しドアを閉めて、頭をかきながら笑って誤魔化す。

「ビールは一日、朝と夜のご飯時一本ずつって決めていましたよね?」

「えっ?今のビールだったの?てっきり牛乳かと思っちゃった〜〜あは、あは、あはは・・・・」

 シンジの眼を見ていると笑う声も次第に細かくなっていった。

「ミサトさん」

「は、はい!」

 シンジの普通より低い声にミサトは驚き、瞬間的に正座をした。

「ビール・・・・・」

「ま、まさか!?」

 シンジの口から出た単語、ミサトはすぐさま理解した。

「ビール1ヶ月抜きです」

「え、えええええ!」

 N2を食らったような衝撃がミサトの体を突き抜けた。

「そ、それは酷い〜〜〜」

「酷くありません、約束を破るからです。それにビール代が減って生活費が浮くから一石二鳥ですよ」

「せ、せめて一日一本にして〜〜〜〜」

 眼から止めど無く流れる涙、土下座して懇願する。

「ダメです、明日も早いから早く寝てください」

「お願い〜〜」

 懇願を無視して部屋に戻ろうとするシンジの足にすがり付くが、ずるずると引きずられて行く。

「ダメです、早く寝てください!早く寝ないと2ヶ月抜きにしますよ」

「え、ええっ!」

 シンジの足に一生懸命しがみついていた手は力が抜け、ミサトは置き去りにされた。

「う、うううっ酷いよ〜〜シンちゃん酷い〜〜〜」

 涙で床を濡らす。

「早く寝る!」

「は、はひ〜〜」

 シンジが怒った、ミサトは体を震わせると飛びあがり部屋に戻った。

 

 

「ふう〜ちょっとお仕置きがきつかったかな?」

 ミサトの部屋の戸を見ながら呟いた。

「可哀想だから抜きは無しにしよう」

 頷くと部屋に戻っていった。そのころミサトは・・・・

「うぐうぐ、ひっくひく、びええええええ〜〜」

 マクラに顔を埋め声を殺して泣いていた。

「私なんて必要無いのね、いいんだいいんだ、こうなったらグレてやる〜〜〜〜」

 (ピ〜〜)歳で不良になる事を決めたミサト、だが次の日の朝食にはすっかりご機嫌となったのであった。


 オペレーションエビチュ失敗!それは死を意味する(笑)

 深夜に行動し至福のひとときを味わおうとしたミサトさんですが、見事にシンジ君に見つかってしまいました(多分シンジ君はミサトさんの行動を読んでいたのでしょう)

 流石シンジ君、台所を自分の城にしているだけある、強い!

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


NEON GENESIS:EVANGELION MOON NIGHT LADY